評価が行っていること
企業価値の評価は、会社がいくらの値打ちかを推定する作業です。結果として出る適正株価は客観的な事実ではなく、入れた仮定から導かれた値です。同じ会社について人ごとに違う数字が出るのは、計算が間違っているからではなく仮定が違うからです。
適正株価は比較と将来の現金という二つの方法で出し、仮定を少し変えるだけで大きく変わります。仮定の読み方、逆算、業種別の物差し、範囲の作り方をまとめました。
企業価値の評価は、会社がいくらの値打ちかを推定する作業です。結果として出る適正株価は客観的な事実ではなく、入れた仮定から導かれた値です。同じ会社について人ごとに違う数字が出るのは、計算が間違っているからではなく仮定が違うからです。
最も広く使われる方法は、似た会社と比べることです。同じ業種の会社が利益や資産に対して平均で何倍で取引されているかを求め、対象の会社にその倍率を当てはめます。計算が簡単で、いまの市場の空気を反映するという利点がありますが、市場全体が過熱していたり冷え込んでいたりすると、その状態を基準にしてしまうという限界があります。
もう一つの方法は、会社がこれから生み出す現金を予想し、それを現在の価値に換算して足すことです。理屈の上ではより根本的ですが、数年先の現金の流れ、割引率、永久成長率を自分で仮定する必要があります。
割引率や永久成長率を1ポイント調整するだけで、最終の値が数十パーセント変わることはよくあります。ですから結果を一つの数字として示すことは、実際より確信を大きく見せてしまいます。仮定を変えながら幅を作り、どんな仮定ならいまの価格が正当化されるのかを逆に見る方法のほうが役立つことが多いです。
誰かが示した目標株価を見るとき大事なのは、結論ではなくどんな仮定を使ったかです。成長率を何パーセントにしたのか、どの会社と比べたのかを見れば、その数字をどれだけ信じるか判断できます。この文章は方法の仕組みを説明するもので、特定の銘柄が安いか高いかという判断は扱いません。
価値評価を実用的に使う方法の一つは、結果を求める代わりに逆から問うことです。いまの価格が妥当であるためには、この会社がこれから何年間、毎年何パーセントずつ成長しなければならないかを計算してみるのです。そうすると、市場がすでにどんな期待を価格に織り込んでいるのかが数字で見えてきます。その期待が会社の過去の成長率や業界全体の成長の速さと比べてもっともらしいかを考えれば、適正株価を一つ当てようとするよりずっと現実的な判断材料になります。過度に楽観的な前提でなければいまの価格が説明できないなら、それ自体が情報です。
すべての会社を同じ指標で評価することはできません。利益が安定している会社には利益に対する倍率がよく合いますが、まだ赤字の成長企業は利益がマイナスなので、その倍率自体が意味を持ちません。銀行や保険のように資産そのものが営業の手段である業種では資産に対する倍率がよく使われ、設備投資の大きい業種は減価償却前の利益を基準に見ることが多いです。景気によって利益が大きく上下する業種には、利益が最も多い時に倍率が最も低く見えるという落とし穴があります。どの物差しを使ったかが結果と同じくらい重要な理由です。
価値評価の計算機を使う時は、数字を一つ得ようとせず範囲を作るために使うのがよいでしょう。まず会社の過去の実績をもとに無難な前提を入れて基準値を求めます。次に成長率と割引率をそれぞれ少し低く、少し高く変えて、悲観と楽観の値を求めます。すると三つの数字ではなく一つの区間ができ、いまの価格がその区間のどのあたりにあるかが見えます。結果が前提に極端に敏感なら、その会社は数字で評価しにくい状態だと受け止めるのが誠実です。計算結果は売買の判断ではなく、理解を助ける参考資料です。
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